|
「あんしんLife」
「地方」から「全国区」を目指せ!
2014年9月号
あんしん財団
商品の魅力を存分にPRすることでパートナー企業を増やしてゆく
・静電気と異物対策の装置開発に特化
・浜松だからつかめたビジネスチャンス
・実験キットでわかりやすく説明
|
「静電気と異物対策の装置開発に特化」
静岡県浜松市に本社を置く(株)トリンクは、静電気と異物対策を目的とした「クリーン関連装置」に特化した開発型企業だ。 精密機械や半導体の製造工業、レンズやフィルムの加工工場、さらには塗装工場、印刷工業など、産業界の製造現場の多くで、製品の不良率を高めるホコリは大敵となる。一般的に、そうしたホコリの付着を嫌う現場では、高性能フィルターを用いたクリーンルームが採用されていることが多い。 しかし、通常のクリーンルームは、除塵機はもちろん、換気用のダクトなども施設しなければならず、さらにはフィルター交換などの定期的なメンテナンスが欠かせない。 しかし同社のほこり対策除電装置は、空間中にプラスとマイナスのイオンを放射。浮遊するホコリや帯電物体の静電気にイオンを電気結合させることで、空間中の静電気をなくしてしまうというものだ。静電気がなくなれば、モノはホコリを吸い寄せず、ホコリは部屋を舞わずに床面に落下。ホコリの付着を防ぐことができる。 装置を設置するだけでホコリ対策を施すことができるので、初期費用や維持費用を抑えられる店でも優れている。
「当社ではこの空間除電器を『空間トリンク』と呼んでいますが、その製品のバリエーションは約200種類ほどあります。空間トリンクで使用する『ポール型』は工場の天井などに数十本、時には数百本取り付けます。ほかにも、電池で動く『ガン型』や、個別の作業空間で使用できる『卓上型』など、場面や用途に応じて、タイプはさまざまです。」 そう話すのは、同社代表取締役社長の高柳真氏だ。
「浜松だからつかめたビジネスチャンス」
高柳氏が除電装置の製造・開発にかかわったきっかけは、大学卒業後に就職した地元企業・ヤマハ発動機(株)のOBが持ってきた話だった。 そもそも高柳氏は、ヤマハ発動機でも生産管理システム構築のプロジェクトの中心メンバーとして活躍した後、父親の知人が経営する特殊電線メーカーに転職して「ファクシミリ」の開発に携わり、やがて受託開発を請け負う企業として独立。そんな折、OBの一人から、ヤマハ発動機のボート事業部で、「塗装のじゃまになるホコリを除去できる除電装置をほしがっている」という話を聞いたのだ。 「光の技術、通信ソフトウェア、メカニズム、筐体、デザインなど、『ファクシミリ』という製品は、あらゆる技術の塊といえます。中小企業で日夜その開発に携わってきたことで、なんでもつくれるという自信はありました。」と高柳氏。
受託を決め、既存の除電装置の問題点を解析。新商品の試作器が完成した。 これを機に受託開発の請負から、ほこり対策除電装置の専門メーカーになろうと決意を固めたのである。
「実験キットでわかりやすく説明」
以降、量産機を開発し、ホコリ対策除電装置の販路を徐々に拡大してきた高柳氏だが、「開発に特化するために、営業部のほか、多くの事務的な業務をアウトソーシングしている」という。現に、同社の従業員数は40名と少数精鋭で、多くは開発部門い籍を置いている。 しかし「空間トリンク」のように、単純に性能やスペックで比較できない「新技術」を売り出して行く場合、その性能を営業先に伝えることは、なかなか難しい。静電気を説明するにしても、それは目に見えるものではなく、言葉や絵で説明しても伝わらない。ましてや外部の営業部隊に広く伝播していくとなれば、より難易どは上がる。ではいったい、外部の営業部隊は商品をどのようにプレゼンテーションしているのだろうか。 その答えは「トリン君」という、ちょっとユニークな、実験キットのような営業ツールである。「トリン君」は髪の毛を模した紙片が付いた、一見すると何の変哲もない筒型の人形だ。しかしプラスチック板を動かす事で静電気が起こり髪の毛(紙片)が逆立つ。逆立ったところで、装置のスイッチを入れると除電が起こり、紙の毛がすっと下がる。まさに、除電の瞬間を目撃する事ができるアイデアツール。これがあるからこそ、自身をもって営業部隊を外部に委託でき、パートナー企業も増やしていけたのだ。 現在、取引先には自動車メーカーや電機メーカーなど、日本経済を支えてきた大企業がずらりと並び、海外への納入も多くなってきた。大手自動車メーカーでは車体塗装の不良率を大幅に削減できたと、信頼も厚い。
特に、同社の大きな転機になぅたのはトヨタ自動車(株)が採用したこと。生産技術部門が正式に効果をみとめたことで、全部門、子会社、関連会社、取引先にまで同社の装置を使うことが奨励された。そして、トヨタに納入するきったけとなったのは、トヨタフィリピン社でのプレゼンテーションだった。
いいものをつくる。シンプルな方法で伝える。パートナーとの協働関係を大切にする―。それが地域から千石、さらに世界に売る秘訣なのだろう。