科学でひもとく

たのしい静電気

その秘められた力とは？

高柳真
Makoto Takayanag i

正体見たり静電気！

は じ め に

　私たちは静電気に対して、あまりにも無知であると言わざるを得ません。
自分自身を振り返っても、中学校の理科の授業でわずか１〜２時間、
教科書に換算すると２〜３時間頁程度の教育を受けたにすぎませんでした。
中には、高校進学後、選択科目の物理の授業で１０頁学んだ人もいることでしょう。
しかし、大部分の人は、義務教育である中学校の勉強だけで終わっています。
大学でも、静電気は教育科目には登場しません。ところが、学校を卒業して
実社会に出ると、最先端の静電気の応用問題と、静電気に関するさまざまな問題が
私たちを待ち構えています。多くの人は、この現実と学生時代に学んだ古典的な
静電気学との間に横たわる、あまりにも大きなギャップゆえに、何ら脈略を感じる
ことができないものと思います。誰もが、自分はかつて学んだ静電気とは関係の
ない新しい仕事をしていると思い込んでいるのです。
　しかし、現実に起きていることは、実は静電気学そのものです。静電気学は、
何か古臭い学問であるかのように決めつられて、誰からも見向きもされない状態が
続いてきました。このような状況が何十年も続いた結果、まさしく化石のような
静電気学が定着してしまい、現代にひっそりと身を隠すように生きてきたのです。
　本書では、最先端の利用を前面に出して、実用的な静電気学を提供し、実際の応用
や諸問題の解決に役立つことを目指すものです。本書がきっかけとなって、若い人
たちが静電気学に興味を覚え、来るべき「静電気全盛時代」の準備をしていただけ
たら幸いです。